老犬が自分でうまく寝返りを打てなくなってきたとき、「床ずれを予防したい」と感じていませんか。
「気づいたら皮膚が赤くただれていた」という経験をされた飼い主さんは少なくありません。老犬の床ずれは、たった数日で急速に進行してしまうことがあります。
「様子を見ていたら大事になってしまった」と後悔する前に、今のうちに正しい予防策を知っておくことが大切です。
この記事では、老犬の床ずれが起こる原因から自宅でできる予防法5つ、進行サインの見分け方、そして大型犬ならではの注意点まで、わかりやすくお伝えします。介護が始まったばかりの飼い主さんにも、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。
老犬が床ずれになる「本当の原因」とは

床ずれ(褥瘡:じょくそう)とは、体の一部が長時間圧迫され続けることで、皮膚やその下の組織が壊死してしまう状態です。
若いころは無意識に体を動かし、同じ部位への圧迫を自然に逃がすことができます。ところがシニア期になると、筋力の低下や関節の痛みで自分から寝返りを打つことが難しくなります。
その結果、特定の部位が何時間も床に押しつけられ続け、血流が途絶えてしまいます。血液が届かなくなった組織はダメージを受け、それが床ずれへとつながるのです。
老犬の床ずれが起こりやすい部位は、骨の突き出た箇所です。頬・肩・腰・ひじ・かかとは、寝ているときに床と直接触れやすく、特に注意が必要です。介護が始まった初期のうちから、これらの部位を意識してケアしていきましょう。
原因① 圧迫による血行不良
骨の突き出た部位は、体重が集中しやすい構造になっています。体重が一点に集中すると、その周囲の毛細血管が圧迫されて血液が届かなくなります。
健康な若い犬なら、違和感を感じた瞬間に体を動かすことで血流を回復できます。しかし老犬はその感覚が鈍くなっていることが多く、また体を動かす力も落ちているため、ダメージが少しずつ蓄積してしまいます。
特に体重の重い大型犬では、圧迫の強さが小型犬とは比べものにならないため、進行のスピードも早くなります。数日間の対応の遅れが、深部まで達する深刻な床ずれにつながることもあります。
原因② 皮膚の乾燥と免疫力の低下
高齢になると皮膚のターンオーバーが遅くなり、表皮が薄くなっていきます。乾燥してひび割れやすく、わずかな摩擦にも傷つきやすい状態になります。
また、老犬は全身の免疫力も低下しているため、ひとたび床ずれができると細菌感染が広がりやすくなります。傷が浅い段階で気づいて対処することが、重症化を防ぐ鍵です。
皮膚の乾燥は表面を見るだけではわかりにくいことがあります。毎日の体位変換のタイミングで、実際に手で触れながら皮膚の状態を確認する習慣をつけましょう。触ったときにざらざらしている、毛がパサついているといった感覚も、皮膚の状態の目安になります。
原因③ 排泄物による皮膚の湿潤
老犬は尿もれや便失禁が起きやすくなります。おしっこやうんちが皮膚についた状態が続くと、皮膚がふやけてバリア機能が大きく低下してしまいます。
湿った状態の皮膚は摩擦に非常に弱く、寝床との接触面で傷がつきやすくなります。排泄後はできるだけ早く清潔にすることが、床ずれ予防の基本中の基本です。
排泄ケアや老犬介護の始まりについては、ケア・介護カテゴリの関連記事もあわせてご確認ください。介護に備えるためのヒントが詰まっています。
自宅でできる老犬の床ずれ予防5つの方法

床ずれは、毎日のこまめなケアで大きく防ぐことができます。特別な技術も、高価な機器も必要ありません。今日から実践できる方法を5つ、順番に解説します。
方法① 2〜4時間ごとに体位変換を行う
体位変換は、床ずれ予防のすべての方法の中でもっとも基本的かつ重要なケアです。
寝たきりの老犬は、2〜4時間に1回、体の向きを変えてあげましょう。左側を下にして寝ている状態から右側へ、さらに仰向けへとローテーションさせることで、同じ部位への圧力を分散できます。
大型犬の場合、一度に全身を動かそうとすると飼い主さんの腰に負担がかかります。まず上半身を起こし、次に腰から下半身を動かすという2段階で行うと、お互いに無理なく介助できます。体位変換の際は、愛犬に声をかけながら、ゆっくりと優しく行うことが大切です。
夜間は間隔が長くなりやすいですが、夜中に1〜2回だけでも起きて確認できると安心です。就寝前にアラームをセットして習慣にするのもひとつの方法です。
方法② 床ずれ防止マットを活用する
圧力分散マットは、体重を広い面積に分散させることで、骨の突き出た部位への集中圧力を和らげてくれます。ウレタンフォームやゲル素材のものが代表的です。
「体が沈みすぎない、適度な硬さのマット」が、圧力の分散と寝姿勢の安定を両立できると言われています。柔らかすぎるマットは体が深く沈んで、かえって特定の部位に圧力が集中することがあります。逆に硬すぎると体への当たりが強くなるため、バランスが大切です。
マットの上にペット用防水カバーをかけておくと、排泄物による汚れが染み込まず清潔を保ちやすくなります。介護用ベッド全般の選び方については、ケア・介護カテゴリの記事も参考にしてみてください。
方法③ 皮膚の清潔と保湿を保つ
老犬の皮膚は乾燥しやすいため、定期的な清拭(せいしき)と保湿が大切です。
固く絞った温かいタオルで全身を拭き、特に骨の突き出た部位を丁寧にケアしましょう。ペット用の保湿クリームやスプレーを活用することで、皮膚のバリア機能を保ちやすくなります。ケア後に少しマッサージするように手でなでると、血行促進にもなります。
排泄後はすぐにお尻まわりを拭き、清潔を保つことが基本です。尿もれや便失禁が頻繁な場合は、ペット用おむつの活用も有効な選択肢です。皮膚をこすらず、やさしく押さえるように拭くのがコツです。
方法④ 栄養管理で皮膚バリアを整える
皮膚のバリア機能を維持するには、タンパク質・亜鉛・ビタミンEなどの栄養素が欠かせません。
シニア期に食欲が落ちてしまうと、皮膚の修復力も低下することがあります。消化吸収がよく、タンパク質をしっかり摂れるシニア犬用フードを選ぶことをおすすめします。最近では皮膚ケアに配慮した成分を含むシニアフードも増えています。
水分摂取も重要です。水をあまり飲まない場合はウェットフードへ切り替えるか、フードに少量のお湯を混ぜて水分量を増やす工夫も有効です。十分な水分は皮膚の潤いを保つのにも役立ちます。
方法⑤ 毎日のスキンチェックを習慣にする
床ずれは早期発見が何よりも大切です。毎日の体位変換のタイミングで、皮膚の状態を目と手で確認しましょう。
骨の突き出た部位(肩・腰・ひじ・かかと・頬)を重点的にチェックします。毛が薄くなっている、皮膚が赤くなっている、触ると嫌がるといった変化は、床ずれの初期サインかもしれません。
毎日少しでも変化を記録しておくと、悪化に気づきやすくなります。スマートフォンで同じ部位の写真を毎日撮っておくと、色の変化なども比較しやすくなります。記録の習慣が、愛犬の大きな変化を早期に発見する助けになります。
こんなサインが出たら病院へ—進行を見逃さないために

どれだけ丁寧にケアしていても、床ずれが始まってしまうことはあります。大切なのは、悪化させる前に気づいて対処することです。床ずれは進行するにつれて痛みが増し、愛犬にとって大きな苦痛になります。
すぐ受診すべき症状
以下のような症状が見られた場合は、なるべく早く動物病院を受診することをおすすめします。
- 皮膚が赤くただれており、触ると嫌がる
- 水ぶくれができている
- 皮膚が破れ、傷や潰瘍になっている
- 傷口から膿や悪臭がある
- 発熱や食欲低下を伴っている
床ずれが重症化すると、皮下組織や筋肉、さらには骨にまで達することがあります。早期の段階で適切な処置を受けることで、回復の可能性が大きく変わります。市販の塗り薬を自己判断で使うと、かえって悪化させる場合もあるため、獣医師に相談することをおすすめします。
様子見でいい軽度のサイン
以下のような状態は初期サインです。この段階でケアを強化することが、進行を防ぐための重要なタイミングです。
- 特定の部位の毛が薄くなってきた
- 皮膚がうっすら赤くなっているが、傷はない
- 軽く触ると嫌がるが、傷はない
初期サインを発見したら、その部位への圧力をすぐに減らしましょう。体位変換の頻度を増やし、マットの見直しも行いましょう。1〜2日で改善しない場合は、放置せずに動物病院に相談することをおすすめします。
大型犬の床ずれは「進みが早い」—ゴールデンレトリバーとラブラドールの注意点

大型犬を飼っている飼い主さんは、特に注意が必要です。
体重が30kgを超えるような大型犬では、骨の突き出た部位にかかる圧力が、小型犬とはまったく異なります。同じ時間寝ていても、圧力が強い分だけ組織へのダメージが大きく、床ずれの進行が速くなります。
数日間の対応の遅れが、深部まで達する深刻な床ずれにつながるケースも報告されています。大型犬の介護では、予防意識をより高く持つことが大切です。体の大きさゆえに介助が難しいことも多いですが、早め早めの対処が愛犬を守ります。
体重が重いほど圧力は集中する
大型犬では、体位変換を2時間おきに行うことが理想的です。しかし夜中も含めてそれを実践することは、飼い主さんにとって非常に大きな負担でもあります。
高品質な体圧分散マットを活用することで、一度の圧力をより広い面積に分散させることができます。マットの品質が上がるほど、夜間の体位変換の間隔を少し長くしても安全性が高まる可能性があります。
体位変換のたびに、体のどの部位が床に当たっていたかを確認する習慣が、早期発見にもつながります。特に体を動かしにくそうにしているときは、丁寧に観察するようにしましょう。
ゴールデンレトリバーの場合
ゴールデンレトリバーはシニア期になると関節疾患や筋力低下が進みやすく、自分での寝返りが難しくなることが多い犬種です。
特に肩・腰・ひじが床ずれの好発部位とされています。これらの部位をドーナツ型クッションや専用の保護パッドで守ることが有効とされています。
ゴールデンレトリバーは皮膚トラブルが起きやすい傾向があります。スキンチェックをより念入りに行い、皮膚の変化が早い場合は早めに獣医師に相談してください。シニア期のケア全般についてはわんケアジャーナルのケアカテゴリでも情報をまとめています。
ラブラドールレトリバーの場合
ラブラドールも体重が重く、寝たきりになると床ずれリスクが高まります。食欲旺盛で太りやすい体質のため、シニア期の体重管理が床ずれ予防の一環にもなります。
適正体重を維持することは、関節への負担軽減だけでなく、床ずれリスクの低下にもつながります。体重増加が気になる場合は、カロリーコントロールされたシニア用フードへの切り替えを検討しましょう。
老犬の後ろ足に力が入らなくなってきた場合は、シニア犬の運動・散歩カテゴリの記事も参考にしてみてください。寝たきりになる前の筋力低下サインを早めにキャッチすることが、床ずれ予防にもつながります。
まとめ
老犬の床ずれ予防は、毎日の小さなケアの積み重ねで大きく変わります。「完璧にやらなければ」と思いすぎず、できることから一つずつ始めてみてください。
- 体位変換は2〜4時間に1回が基本。体重の重い大型犬は特に頻繁に行いましょう。
- 床ずれ防止マット・皮膚ケア・栄養管理を組み合わせた多角的な予防が効果的です。
- 皮膚の赤みや傷が見られたら、早めに動物病院に相談することをおすすめします。
介護が始まると毎日やることが多くて、疲れてしまうこともあります。それは当然のことです。わが子のそばにいて、丁寧に確認する時間を続けていきましょう。一つずつできることをこなしていくことが、愛犬の快適さを守ることにつながります。
▶ わんケアジャーナルのYouTubeでは、シニア犬の介護・ケア動画を公開しています。
体位変換の正しいやり方など、実践的な動画も配信中です。ぜひチャンネルをご覧ください。
